【自作小説】 第13の男 〜幸運0の多幸戦士〜 (仮) 【ファンタジー】

第13の男〜幸運0の多幸戦士〜(仮), 冒険譚, 小説

第一章 〜生成〜 第2話

 

 

 

− 闇の中、私の意識は覚醒する。

 

目を開くと、薄明かりの中、円筒形と思わしき空間にいた。
私の目の前には、黒髪黒瞳、中肉中背で心持ち目付きが鋭い他は特徴のない顔立ちの男がおり、なんとも言えない表情と格好でこちらを見つめている。

 

 

予め組み込まれた情報により、この男が《我が主》なのだと瞬時に認識し、私自身が何者かもすぐに理解する。
そして、確立された自意識を与えられたことに、心の中で礼を言う。

 

−−− ガシャン −−−

 

全てを認識すると同時に、我が主の目の前、私の真後ろで扉が開いた。

 

「ジュウゾウさん、ですね」

鈴の音のような少女の声だ。

 

「無事、ガジェット生成まで終わりましたね?」

一呼吸おくと、事務的な口調で吟味するかのように「ジュウゾウ」と呼ばれた我が主を見据えている。

我が主の名前は、ジュウゾウというらしい。《本国》風である。

 

我が主は、声の方に振り返ると、少女の質問に答える代わりにこちらを指差し、小さく頷く。
それを見た少女は、私を見上げて少し目を見開くと、同じように小さく頷く。

続けて少女は、申し遅れまして、と「レイ」という名であることと、《ネスト》の最先任職員という旨を簡単に自己紹介した。

最先任というが、見た目は若い。少女の外見は15,6歳程度だ。
白雪のような長く美しい銀髪を背中に流し、前髪は綺麗に切り揃えている。

その髪よりさらに白い肌は、青白いと言えるくらい白く透き通っていながら滑らかで、まるで高級な陶磁器のようだ。
柔らかくも整った顔立ちに、真っ直ぐこちらに向けられた瞳は宝石のような深い紅色を湛えている。

どこか近寄り難い雰囲気を醸し出しているが、街を歩いていれば老若男女関係なく10人中10人が振り向きそうな美少女である。

 

「さて、ジュウゾウさん」

改まった調子でレイは我が主に声をかけた。

 

「この機械、《ヒトガチャ》から出ていらした時点で、大方のことはご理解いただけているかと思います」

ゆっくりと首を縦に振る我が主。

 

− そう。私だけでなく我が主もまた −

 

「知識や意識に不具合を感じるところはございますか?」事務的なレイの声。スッと細めた瞳は何を映しているのか、吸い込まれるようだ。

 

「問題ない・・・と思う。正直、まだなんとも言えないが」

「・・・こんな格好だしな」

 

我が主は、肩を竦めて苦笑いしつつ付け加えながらも、その声は不安であることを隠しきれていない。
しかし、不安であっても決して萎縮していないことが様子から分かる。

 

私は、我が主の佇まいからそのことが確認できて、特徴の乏しい顔に似合わぬ頼もしさを感じた。

 

「いえいえ、その様子であれば大丈夫そうですね。衣服もこちらに用意がございます」

受け答えに満足したのか、レイの表情が和らいだ。
そして歓迎を全身で表すように、両腕を広げて大きく頷く。

 

「それでは改めまして、誕生を歓迎します!今この瞬間から、ジュウゾウさんはこの《門の街、トーア》における《ネスト》の所属員です」

 

− 今、生成されたのだ −

 

我が主がどの程度の知識を持たされて生成されたかは分からないが、何を隠そう、私は【ヒトガチャ】 − 銘を『キサラギ』という − からかなりの情報を刷り込まれている。
今後、機会があれば只人が知る由もないそれらを披露することになるだろう。

 

ともあれ、今、理解しておくべきは、

・我が主は、人間、男、20歳として【ヒトガチャ】によって生成された
・私は、我が主の遺伝情報を基にその意思を反映し、専用の補助道具として【ヒトガチャ】に付随的に生成された人造生命体である
・ネストは、国を越えてダンジョンを管理している団体であり、この街での大きな目的は、街の南にある《門のダンジョン》の探索と調査である

 

− ちなみに、ネストとは、《New Environmental Special Taskforce》の略称である。新環境統治機構などと呼ばれていたこともある。
1000年ほどの歴史を誇り、現在ではダンジョンの適正な管理と維持及び処分に力を注いでいる他は、謎多き組織である。
発言力の大きさは、ことダンジョンに関わる取り決めについては、各国よりネストの意見が必ずと言っても良いほど尊重されることから自ずと分かるだろう。

 

この程度だと思う。
何せ、まだ何も始まっていないのだ。焦ることはない。
我々は、目的を探すのが目的といっても過言ではない状態なのである。

 

なお、ガジェットには主人の状態を確認し大まかに数値化できる機能、走査《スキャン》が備わっている。

先ほど簡易的にスキャンを行ったところ、我が主の基礎能力は、とてもありがたいことに平均に比べると高めだった。
ただ一点、幸運の値が著しく低かったこと、もっと言えば丸っきりの0だったことが、これからともに生きる身としては甚だ不安だが・・・。

 

もちろん、数値はあくまで目安でしかなく、実際は立ち回りや機転等が大切であることは言うまでもない。
幸運なるものが数値化できたとしてもまた然り。

 

最も大切なのは、どう生きるか。

 

生きることは、数値では測り切れないからこそ面白いのだ。